10ドライバの完成形「Noble Audio Kaiser 10 Universal」のレビュー
イベント会場で初めて試聴したときから、小さな筐体に似合わず、音の密度が凄いという印象を受けていました。
購入してからもそれは変わらないようで、全ての音を余すところなく耳までダイレクトに届けるような、さらには勢いとキレのあるサウンドとなっています。
音のバランスは僅かに低域が多いように感じますが、ほぼフラットといえるでしょう。高音は曲によって時々刺さる程度で、聴きやすい部類。
普通、BGMを前に出そうとするとボーカルが埋もれてしまったりしますが、K10Uは各帯域が主張しつつも埋もれず、絶妙なバランスに調整されており、結果、全てが驚くほどクリアなサウンドが実現しています。
手持ちの機種に例えるなら、ヘッドホンになりますがedition9の傾向に近いと感じました。そこから低域の量と高域の刺さりを抑え、綺麗にまとめた感じでしょうか。edition9よりもオールマイティ―に仕上がっています。
よく合う楽曲を挙げるなら、先に書いたとおり低音が僅かに多いため、男性ボーカルのアップテンポなもの、かといって女性ボーカルが苦手というわけではなく、また、しっとりとした楽曲も違和感なくこなす実力を持っています。
それじゃボーカルもの以外はというと、例えばオーケストラでは、細かな楽器の音まで聞き取ることができる一方で、量感ある低音に埋もれることなく、迫力も繊細さも十分。こちらも問題なし。
苦手な楽曲がないのではないかと思うほど安定感のある音で、まさに多ドライバBA型イヤホンの一つの完成形だと個人的には思っています。
そんなK10Uですが、ネックはやはりお値段。現行のAluminiumで21万円超、限定版で23万円と、カスタムIEMのハイエンド群まで視野に入る価格となっています。
そして音についても、一分の隙も無いのは確かです。確かなんですが、それでも欠点を挙げるとするならば・・・
例えば、普段から何本ものイヤホンを気分や楽曲によって使い分ける移り気な方にとっては、クセのないオールマイティ―だからこその飽き易さというか、どの曲も100点だけど、どれも決して120点には届かないような、悪く言うならそんなイメージ。美人は三日で飽きるといいますがはてさて・・・
それはさておき、やはり実力は申し分ないので、一軍に収まる可能性の方が高いでしょう。
また、様々なジャンルの楽曲を聴くけど、イヤホンは一本に絞りたい、といった方にもかなり魅力的な選択肢になります。
残念ながら現在は新モデルに移行しており、そちらは試聴程度なので詳しいレビューはできません。ただ、そこまで大きな音の変化はないようでしたので、予算と外観が許せるようでしたら是非。
Noble Audio KAISER10 UNIVERSAL ALUMINIUM